【参加レポート】ATA(米国翻訳者協会)のカンファレンスに参加してきました!

スキルアップ
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個人翻訳者として実際に仕事を受け始めて3年、フリーランスとして独立して2年、これまでオンラインではさまざまなセミナーや勉強会などに参加してきましたが、今回初めて現地の会場で翻訳イベントに参加してきました!

参加したのは、ATA(米国翻訳者協会)が年に一回、毎年開催しているカンファレンスです。

Schedule at a Glance - ATA 65th Annual Conference (ATA65)
Build partnerships, promote yourself, make new friends, get more involved with ATA, or simply have fun at ATA65!

ATAとは、米国最大の翻訳者・通訳者向けの団体で、登録料を払えば誰でも会員になることができます。ATAの会員になると、ATA主催のセミナーにお得に参加できたり、対応言語のコミュニティに属してネットワークを構築できたり、お仕事のオファーがあったり、営業したり、翻訳者・通訳者にとって有益な情報が得られる場です。

私はコロナ禍で翻訳を始め、地方在住ということもあり、翻訳に関するセミナーやイベントにはオンラインで参加することが当たり前でした。しかし今回は会場まで足を運んでイベントに参加することができたので、参加した感想や学びを記録しておきたいと思います。

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カンファレンスに参加した理由

今年はATAカンファレンスの会場が米国オレゴン州のポートランドということが、ひとつ参加を決めたきっかけになりました。個人的にポートランドには縁があり、宿泊先も現地に住む友人を頼ることができたので、バケーションがてら思いきって参加することにしました。

また、どうしても気になるセッションがいくつかあったのも参加を決めた理由です。ATAのカンファレンスはオンライン配信はないので、現地に行くしか参加する方法がありません。

カンファレンスは3日間行われますが、今回はそのうちの1日のみ、参加することにしました。カンファレンスの参加費は決して安くはなく、昨今の円安もあり、全日程に参加すると参加費だけで日本円でゆうに10万円は超えてしまいます。今回、1日だけの参加でしたがそれでも日本円で約40,000円ほどでした。飛行機代も考えるとかなりの出費になりますので、参加したいセッションが多く開催される日だけを狙って参加しました。

会場の様子

受付~セッション参加まで

初めての翻訳イベントということと、「40,000円近くも参加費を払っているのだから、何かしら収穫を得なければ!」という気負いから、当日は少し緊張していました。それでも「せっかく来たから素直に楽しもう」というスタンスも忘れずに、会場へ向かいました。

会場に到着するとまずは受付を行い、自分の名札を受け取ります。初めての参加だと言うと、 “First Attendee“ のステッカーを渡してくれました。隣で一緒に受付していた他の参加者の方(おそらく欧米の方)からも “Welcome!” と歓迎してもらい、初めての参加でもウェルカム感があったのはとても安心しました。

たまたま一緒に受付を行ったその翻訳者の方はとてもフレンドリーで、セミナー会場まで一緒に雑談しながら中に入っていったのですが、久しぶりの英語ネイティブとの会話で内心はどきどき。「英会話も頑張らないとな」と改めて感じた瞬間です…。

この日参加したセッションは全部で4つです。

①「Beyond the Cookie-Cutter: Differentiate Yourself as a Language Professional Through Podcasting」

②「Reskilling of Language Professionals in the Era of Machine Translation Integration」

③「From Commodity to Valued Partner: Ten Strategies to Stand Out and Transform Your Language Service Business」

④「Using Objective Data to Set Your Freelance Rates」

1つ目のセッション&ベトナム人翻訳者との出会い

まずは午前中のセッション、「Beyond the Cookie-Cutter: Differentiate Yourself as a Language Professional Through Podcasting」に参加しました。

内容はざっくり言うと、自分のPodcastを作って発信力を高めましょう、というようなお話でした。私は自分のPodcastは持っていませんし、YouTubeもやっておりません。これから参入する予定もないですが、翻訳者もこうやって発信をされている方もいるのか、と勉強になりました。

翻訳者として役に立つようなPodcastチャンネルもいくつか紹介していて、翻訳やローカライズに特化したPodcastがあることを初めて知りました。ATAもPodcastのチャンネルを持っており、これから自分の情報収集源としてPodcastも積極的に聞いていきたいと思いました。(リスニングのトレーニングにもなりますね)

セッションでは参加者が自分のお気に入りのPodcastをどんどんシェアしていて、あまりPodcastを聞かない私はちょっと圧倒されてしまいました…。

次に参加予定のセッションまで、ランチ休憩をはさんで2時間ほど時間がありました。

ランチは各自でそれぞれ取っているようで、皆さん外に食べに行っているようでしたが、私は会場内のカフェで軽く済ませることにしました。

休憩エリアでひとりコーヒーとスコーンでゆっくりしていると、ベトナム人翻訳者の方が声をかけてきました。私を見てベトナム人と思ったようです。私はベトナム語は話せませんが、過去に仕事でベトナムに住んでいた経験があり、それをネタに少しお話してみました。

彼女はポートランドの学校で通訳者・翻訳者として働いているとのことでした。元々英語は話せなかったものの、自分の子供たちの教育環境を考えてベトナムからアメリカへ移住し、家族のために言語を習得して就職したというお話を聞いて、本当に頭が下がりました。

言語を習得するために、とにかく多くの英語の文章を読んだそうです。今でも読むことは欠かせないと。やはりインプットがないとアウトプットの量も増えないですよね。自分はそこまでインプットできているのか、考えさせられます。

このベトナム人翻訳者の方が本当に親切で、私がカンファレンスに初めて参加していることを知ると、会場内の展示会ブースを案内してくれました。展示会ブースでは翻訳会社や翻訳関連ツールを販売している企業などが自社のサービスを紹介しています。

その中で、ある企業の方とお話することができました。翻訳とその関連業務(請求書の発行やプロジェクト管理など)を1つのプラットフォームで完結できるというツールを販売している、「Bureau works (https://www.bureauworks.com/)」という会社です。

会場ではツールの使い方のデモンストレーションをしていて、いわゆるCATツール(Tradosなど)と同じような機能を備えた上で、請求書の管理もできるというようなツールでした。

個人的には「ソースファイルを元に翻訳後の完成版イメージをプレビューできる」機能が魅力的に感じました。無料体験ができるとのことだったので、アカウントの登録だけしてきました。翻訳業界もテクノロジーの発展が目覚ましく、ツールを使いこなすスキルも必要だな、と感じます。

2つ目のセッション&機械翻訳について

そうこうしているうちに2つ目のセッション時間に。いろいろと案内してくれたベトナム人翻訳者の方と別れ、2つ目のセッション「Reskilling of Language Professionals in the Era of Machine Translation Integration」に参加しました。

このセッションは、ある外資系ホテルの日本語ローカリゼーション責任者の方によるセッションでした。私はそのホテルがエンドクライアントであるMTPE案件(Machine Translation Post Editing)を受けることがあるので、ホテルとしてMTPEをどう位置付けしているのか、どう評価しているのか興味があり、参加しました。

このセッションの中で驚いたのが、

「機械翻訳は翻訳の仕事にネガティブな影響を与えると思う人は?」と登壇者の方が問いかけた際にはほとんど手が上がらなかったのに対して、「機械翻訳は翻訳の仕事にポジティブな影響を与えると思う人は?」と問いかけると、ほとんどの人が手を上げたことです。

私個人としては、ネガティブな面もポジティブな面も両方あると思っていたので、ほとんどの人が機械翻訳に肯定的だったことが私としては驚きでした。どんなバックグランドの方々(個人翻訳者なのか翻訳会社の人なのか)がセッションに参加していたのか分かりませんが、グローバルではこれがもはやスタンダードな考え方なのでしょうか。

機械翻訳が普及しているとはいえ、ホテルのような High-Hospitality の分野では引き続き「人間による翻訳」が必要ですし、ほかにも機械翻訳でカバーできない分野もいくつかあると、個人的には思います。

このセッションで、機械翻訳がカバーできない分野として、やはりホテルのようなHigh-Hospitalityのマーケティング分野を上げていました。マニュアルなど機械翻訳で処理されやすい翻訳だとしても、「編集・校正」といったスキルが人間に求められることが分かりました。これからは翻訳だけではなく「編集・校正」スキルも磨いていく必要がありそうです。

3つ目のセッション&日本人翻訳者との出会い

次のセッションまでまた1時間ほど時間があったので、会場の休憩エリアで休憩していると、その日一番の出会いがありました。なんと、日本で受けたオンラインセミナーで登壇されていた方と、初めて、直接お会いすることができました。

米国在住の英日翻訳者の方で、私は何度かオンラインセミナーに参加したことがあり、「もし今回、直接お会いできるようなことがあればご挨拶しよう」と思ってはいたのですが、まさか本当にお会いできるとは思いませんでした。

他の方と談笑されていたので、声をかけるのはとても躊躇してしまったのですが、「こんなチャンスはめったにない!」と、思い切って声をかけさせていただきました。思いのほかとても快く対応してくださり、名刺をお渡しすると私の名前を憶えていてくださったようで、それも感激です。

偶然にも次に参加するセッションが同じだったので、一緒にセッションに参加することができました。私が今対応している翻訳分野のことを話したり、ATA会員が参加できるATAの中の日本語部隊について共有いただいたり、またその方の先輩だという別の翻訳者の方を紹介いただいたり、とても有意義な時間でした。こうやって翻訳者のネットワークは広がっていくのですね。

3つ目のセッションは日本人通訳者によるセミナーでした。「From Commodity to Valued Partner: Ten Strategies to Stand Out and Transform Your Language Service Business」という題目で、AIや機械との差別化、セルフブランディング、付加価値の提供、といったクライアントから選ばれるために必要な要素について、事例を交えながら知ることができました。

一番驚いたのは、通訳の世界にもAIが通訳する場面が出てきた、ということです。通訳は翻訳に比べてまだ人間がやる必要があると思っていたのですが、AIで行う通訳現場もあるようで、通訳業界にもここまでテクノロジーが発達していることにとても驚きました。

AIがこれだけ発達している中で「自分の価値は何なのか?」という点は、これからは特に考えていかなければなりませんね。

一緒にセッションを受けた英日翻訳者の方ともう少しいろいろお話してみたかったのですが、どうしても参加したい4つ目のセッションが残っていたので、名残惜しみつつも次のセッションに移動しました。

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4つ目のセッション&レート設定について

4つ目のセッションは「Using Objective Data to Set Your Freelance Rates」。このセッションを受けるために今回ATAカンファレンスに参加した、といっても過言ではないくらい、一番興味のあったセッションです。

フリーランスとしてしっかり生計を立てるために、どうやって自分のレートを定めたらいいのか、レートをあげるためにはどうしたらよいのか。これらの疑問を少しでも解決できるようなヒントが得られたら、と思い参加しました。

このセッションでは、「お金に対するマインドを変えること」ということを主張されていました。「クライアントが提示してくるレートをそのまま受ける『受け身』ではなく、何にいくら請求する必要があるのか、自分に必要な金額を洗い出した上でこちらからレートを提示するという『能動的』な姿勢が大事である」とのこと。

「自分のレートを提示することを恐れない」

「必要なら ”No” と断る勇気を持つこと」

欧米人は日本人に比べて、皆さん強気にレートを提示しているものだと思っていましたが、割とそうでもないのですね。同じような課題を抱えている翻訳者さんが多いことが分かりました。

適切なレートを請求すること、理想のレートを常に追い求めながら、スキルアップしたり、新規開拓したり、文字単価だけでなく時給にしたり、いろいろと工夫すること。しっかり稼いでいる人たちはこれらを怠らず少しずつステップアップしていることが分かりました。

個人的に印象に残っているのは、「直接収益を生まない作業も考慮してレートを設定すること」。今まさに私が課題としているところです。

多くの案件を打診いただけるのは非常にありがたいのですが、仕事が増えるにつれて翻訳に直接かかわらない作業もどんどん増えていきます。例えば、クライアントとのメールのやり取り、納期の交渉、案件を受けるためのスケジュール調整、請求書まわりなど。

私は通訳を行っていませんが、通訳者の方だと、実際に通訳する時間だけでなく、現場に行く移動時間、当日の待ち時間、下調べの時間など、一つの依頼を完結させるまでにさまざまな時間が発生することが想像できます。

翻訳の仕事を始めたばかりの頃はこれらの作業があることを全く考慮していませんでした。ですが今は、直接翻訳に関わらない作業も増えてきたので、新しくこれから契約する際には少しでもそういった作業の手間もレートに反映していきたいものです。効率化できる事務処理はどんどん効率化していく必要もありますね。

さいごに

今回ATAカンファレンスに参加してみて、結果としては「思い切って参加してよかった」と改めて思います。参加を決断した自分、実際に会場まで足を運んだ自分は「よくやった」と褒めたいくらいです。仕事柄、自宅に閉じこもってパソコンの前でぐるぐると考えこんでしまうことが多いですが、それなら外に出て行動してしまったほうが大きな収穫を得られることを実感しました。当たり前のことではあるのですが…。

私は今回、3日間の開催中1日しか参加していませんし、1日の中でも何十とあるセッションの中のほんの一部である4つのセッションに参加しただけですが、それでも自分なりに収穫はあったと思います。加えて、オンラインセミナーを受講したことのある英日翻訳者の方と直接お話できたことが私にとってはとても嬉しく、わざわざ来た甲斐がありました。

ATAの登録会員は各言語のグループに属することができて、私も日本語部隊のグループに所属はしているものの、まだまだ活用はできていません。今後は日本語部隊のメンバーの方ともコミュニケーションをとって自分のネットワークを広げられるようにしていきたいと思っています。

ATAカンファレンスは参加費も高いですし、日本から行くにはお金も時間もかかりますので、強く勧めることはできませんが、チャンスがあれば参加してみると良いと思います。何かしら新しい出会いや発見があるはずです。

日本に帰国後は、JTF(日本翻訳連盟)が主催する翻訳イベントにオンラインで参加しました。日本での翻訳イベントと米国での翻訳イベント、両方に参加した感想についてこちら記事で紹介しています。良ければこちらもご覧ください。


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